鎌倉山（かまくらやま）は、神奈川県鎌倉市深沢地域に位置する地名で、鎌倉山一丁目から四丁目までの区域が現行の行政地名として認定されています。この地域は主に山林で構成されており、標高は約100メートル程度の丘陵地帯です。鎌倉市の西部に位置し、北は笛田、西は手広、腰越、津、南は七里ヶ浜、稲村ヶ崎、東は極楽寺と接しています。
鎌倉山という名称には「山」という文字が含まれていますが、実際には標高100メートルほどの丘陵地帯です。地域全体が山林に覆われており、主要な道路沿いには住宅が点在しています。鎌倉山内の主要な道路には多数の桜（ソメイヨシノ）が植えられており、桜の開花シーズンには多くのハイキング客が訪れ、賑わいを見せます。
鎌倉山の山頂付近には鎌倉山神社があり、そこからは七里ヶ浜の海、江の島、富士山、逗子マリーナ、三浦アルプスなどを一望することができます。また、極楽寺方面や稲村ヶ崎へ抜ける山道も存在し、かつては鎌倉から手広方面へ抜ける近道として利用されていましたが、昭和30年代に周辺の交通網が整備されたことにより、現在ではあまり使用されていません。しかし、通行は可能です。
鎌倉山には国道や県道は通っておらず、市道大船西鎌倉線（旧京浜急行自動車専用道）や神奈川県道32号藤沢鎌倉線常磐口交差点から笛田を経由し市道大船・西鎌倉線に合流する約3kmの市道（さくら道）が主要な道路となっています。市道大船・西鎌倉線とさくら道の交点には「鎌倉山ロータリー」というロータリー交差点が設置されており、これが地域の中心的な交通拠点となっています。
2023年（令和5年）1月1日の公示地価によると、鎌倉山3-16-24の地点での住宅地の地価は16万6000円/m²とされています。
「鎌倉山」という名前が最初に登場するのは、万葉集に収録された歌とされています。その後も平安時代や鎌倉時代にかけて「鎌倉山」という名称が様々な史料に登場しますが、これらの鎌倉山は特定の山を指すものではなく、あくまでも「鎌倉の山」という意味で使用されていました。
現在の「鎌倉山」としての地域名が使われるようになったのは昭和初期です。実業家の菅原通濟が深沢村（現在の鎌倉市深沢地域）裏の丘陵を「鎌倉山」と名付け、別荘地として開拓したことが始まりです。1926年（大正15年）に「大船-江の島自動車専用道路」の建設が政府から許可されると、菅原らが役員を務める日本自動車道株式会社が設立され、沿線地の開発が進められました。
菅原がドイツ人貿易商のクルト・マイスナーからこの丘陵の景観が優れていることを教えられたことが、別荘地開発のきっかけとなり、1929年（昭和4年）に分譲が開始されました。当初の大字としては笛田および腰越・津に跨る地域でした。
この開発においては、電線の地中化など高価格となるような施設工事は行われず、分譲地の坪単価は比較的安価でした。しかし、大船～鎌倉山～江ノ島間を結ぶ自動車専用有料道路による東京へのアクセスの良さ、上水道、電気、電話の完備など、便利さが強調されました。また、最低分譲区画を500坪とし、「高級別荘地」であることがアピールされました。
この高級感を強調したプロモーションが成功し、近衛文麿、徳川家達、三土忠造、大倉喜八郎、末山熊次郎（秩父鉄道社長）、高西淑次（三井物産参事）、森恪、市村羽左衛門 (15代目)、松本幸四郎 (7代目)、藤原義江など、政財界や芸能界の著名人が第一回分譲組として別荘を購入しました。そのため、鎌倉山は軽井沢などと同様の賑わいを見せました。しかし、彼らは別荘地を所有する「鎌倉山住宅株式会社」の株主であり、それ以外の一般分譲販売は振るわず、同社はまもなく倒産。負債整理のため、箱根土地株式会社から西武へと転売されました。
戦後、別荘の多くが進駐軍に接収され、鎌倉山は一時期さびれました。しかし、高度成長期以降、住宅地として再開発が進められ、1985年には笛田、腰越・津から分離し、鎌倉山一～四丁目として住居表示が実施されました。
2023年（令和5年）9月1日現在、鎌倉市が発表した鎌倉山の世帯数と人口は以下の通りです。
鎌倉山ロータリー付近にある鎌倉山バス停からは、京浜急行バスが鎌倉駅方面、大船駅方面、江ノ島方面へ向かう路線が運行されています。以下は主要なバス路線の一覧です：
鎌倉山は鉄道駅からは少し離れていますが、京浜急行バスのバス停が複数あり、最寄り駅へバスでアクセスできます。以下は主要な鉄道駅です：