御霊神社は、神奈川県鎌倉市坂ノ下に位置する神社で、通称「権五郎神社」としても知られています。旧社格は村社に属し、鎌倉市内には同名の神社が他にも存在しますが、こちらの神社は特に鎌倉権五郎景政を祀ることで有名です。
御霊神社の創建年代は明らかではありませんが、平安時代後期に創建されたと推定されています。元々は、鎌倉党の5つの家系である鎌倉氏、梶原氏、村岡氏、長尾氏、大庭氏の霊を祀っていたため、「御霊神社」と通称されました。その後、鎌倉権五郎景政が主祭神として祀られ、神社は「権五郎神社」とも呼ばれるようになりました。
鎌倉権五郎景政は、平安時代後期の武将で、坂東平氏の一族として鎌倉武士団を率いていました。彼は16歳の若さで、源義家の陣営に加わり、後三年の役（1083年-1087年）に従軍し、その武勇で知られています。特に、『奥州後三年記』に記された、左目を敵に射られながらも屈せずに戦い続けたエピソードは有名です。このことから、学業成就や必勝の神として信仰されるようになりました。また、林羅山の考定によれば、眼病平癒の効験があるとされています。
御霊神社の境内には、複数の境内社が祀られています。稲荷神社、秋葉神社、第六天社、地神社、祖霊社、御嶽神社、石上神社、金毘羅社などがあります。それぞれが異なる神を祀っており、地域の信仰を集めています。
稲荷神社は、伏見稲荷大社から勧請されたもので、食物や稲の生産と豊穣を司る宇迦之御魂大神を祀っています。
秋葉神社は、火之迦具土神を祀り、明治初期の大火災をきっかけに、火災鎮護を願って創建されました。
石上神社は、かつて前浜沖にあった巨石を御神体として祀り、海上安全や豊漁の守護神として崇敬されています。
タブノキは、社務所の前にそびえ立つ樹齢約350年の巨木で、樹高は20mに達します。このタブノキは、鎌倉市指定天然記念物であり、神奈川県の「かながわの名木100選」にも選定されています（1984年12月選定）。
御霊神社では年間を通じてさまざまな祭事が行われます。 1月1日の元旦祭や、7月25日に近い日曜日に行われる石上神社の例祭などが特に有名です。例祭の際には、「御供流し神事」が行われ、海神の霊を鎮め、海難犠牲者の霊を慰めるために御供（神前に供えた赤飯）を海中に流します。
石上神社例祭では、7月20日に神幸祭を行い、7月25日に近い日曜日に「御供流し神事」が行われます。権五郎神社の前浜（由比ガ浜）にて、若者たちが御供を持って海中に泳ぎ出し、船に乗せた神輿を拝してから御供を流します。
9月17日には敬老祭が、翌日には例祭が行われ、「面掛行列」や「鎌倉神楽」、「神幸祭」が開催されます。これらの行事は地域の伝統を守る重要な文化財として認められています。
力餅屋は、御霊神社の門前に位置する和菓子店で、江戸時代の元禄年間（1688年～1703年）に創業しました。この店で販売されている「権五郎力餅」は、つきたての餅を出来たての餡で包んだもので、添加物を一切使用していないため日持ちはしませんが、その風味と食感が特徴です。また、求肥力餅や福面まんじゅう、源氏山、夫婦まんじゅうなども販売されています。
御霊神社へのアクセスは、江ノ電の長谷駅または極楽寺駅から徒歩で行けます。この神社は、鎌倉の観光スポットとして多くの参拝者に親しまれています。