安養院は、神奈川県鎌倉市大町に位置する浄土宗の寺院で、山号は祇園山、寺号は長楽寺です。本尊は阿弥陀如来であり、また、千手観世音菩薩(田代観音)も安置されています。この寺は、坂東三十三観音および鎌倉三十三観音霊場の第3番札所として知られています。
安養院は、5月のツツジが見事に咲き誇ることで有名です。境内には、鎌倉時代に建立された宝篋印塔(ほうきょういんとう)があり、これは国の重要文化財に指定されています。また、札所本尊である千手観音に向かって「おん ばざら たらま きりく そわか」と唱える真言も広く知られています。
安養院の歴史は、長楽寺、善導寺、そして田代寺という3つの前身寺院と密接に関係しています。この地は元々、浄土宗の僧・尊観によって開かれた善導寺があった場所でした。1225年(嘉禄元年)、北条政子が夫である源頼朝の菩提を弔うために、願行を開山として長谷笹目ヶ谷(現在の鎌倉文学館付近)に長楽寺を創建しました。山号は祇園山と号し、律宗の寺院として繁栄しましたが、1333年(元弘元年)に兵火によって焼失しました。その後、この地にあった善導寺に統合され、安養院長楽寺と号しました。「安養院」という名前は、北条政子の法号に由来しています。
一方、田代寺は1192年(建久3年)に田代信綱が尊乗を開山として比企ヶ谷に建立した寺院です。後に江戸時代になって安養院に統合され、田代寺にあった千手観音が安養院に移されました。この千手観音は田代観音とも称されています。
安養院の山門をくぐると、日限(ひぎり)地蔵が安置されている地蔵堂が目に入ります。この地蔵は、特定の日に願いを込めて祈ると、願いが叶うと信じられています。
本堂は観音堂とも呼ばれ、寺の本尊である阿弥陀如来坐像が安置されています。この像の背後には、札所本尊である千手観音立像が鎮座しています。この堂内は、鎌倉時代の信仰の息吹を今に伝える重要な場所です。
境内には、十三重の石塔や多くの石仏が点在しています。これらの石仏群は、鎌倉時代から続く信仰の象徴であり、訪れる人々に安らぎを与えています。
安養院には、伝・北条政子の墓とされる場所もあります。また、尊観上人が自らの手で植えたと伝えられる槇の木が現存しており、鎌倉市の天然記念物に指定されています。この木は、長い歴史を経てもなお、力強くそびえ立っています。
安養院には、鎌倉時代後期に建立された宝篋印塔があり、これは国の重要文化財に指定されています。この塔には、「徳治三秊戊申七月日」と刻まれており、歴史的な価値が非常に高いとされています。
鎌倉市指定の文化財として、木造の願行房円満上人坐像があり、これは1991年(平成3年)に指定されました。また、境内には1973年(昭48年)に指定された天然記念物の槇の木が1株残っています。
安養院の所在地は神奈川県鎌倉市大町3-1-22で、JR東日本の横須賀線や江ノ島電鉄の「鎌倉駅」から徒歩17分の場所にあります。この立地は、観光客にとっても訪れやすい場所にあります。
安養院は坂東三十三観音霊場の第3番札所です。前後の札所としては、第2番の岩殿寺(逗子市)と第4番の長谷寺(鎌倉市)が位置しています。
また、鎌倉三十三箇所霊場でも第3番札所に指定されており、前後には第2番の宝戒寺と第4番の長谷寺が位置しています。
安養院は、鎌倉の歴史と信仰を今に伝える貴重な寺院であり、多くの観光客や信仰者が訪れる場所です。歴史的な背景や文化財の豊かさ、そして自然の美しさが調和したこの寺院は、訪れる者に深い感動を与えます。