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長谷寺(長谷観音)

(はせでら はせ かんのん)

日本最大級の木造の仏像

長谷寺は、鎌倉時代以前から存在すると伝えられる古い寺院です。正式には「海光山 慈照院 長谷寺」と称し、長谷観音(はせかんのん)という名前でも広く知られています。

坂東三十三観音霊場の第四番札所としても名高い寺院です。本尊として祀られているのは、日本最大級の高さ9.18メートルの木造仏像である十一面観世音菩薩像です。

観音堂は平らな地に建てられており、そこには展望台も設けられています。展望台からは鎌倉の海や長谷の町並み、さらには三浦半島まで一望することができます。

紫陽花の名所として知られ、40種類2500株のアジサイの咲く花の寺として親しまれています。

本尊とご詠歌

長谷寺の本尊である十一面観音像は、正式な真言として「おん まか きゃろにきゃ そわか」を唱えられ、ご詠歌は「長谷寺へまいりて沖をながむれば 由比のみぎはに立つは白波」とされています。

歴史

長谷寺の創建は奈良時代に遡ると伝えられていますが、中世以前の歴史については明確な記録がなく、創建の時期や経緯は未だに解明されていません。

寺伝と伝承

寺伝によれば、天平8年(736年)に大和の長谷寺(奈良県桜井市)の開基である徳道上人を藤原房前が招き、十一面観音像を本尊として開山したとされています。また、養老5年(721年)には徳道が大和国の山中で見つけた楠の大木から二体の十一面観音像を彫り、その一体を大和長谷寺の観音像とし、もう一体を祈願の上で海に流したところ、15年後に三浦半島の長井浦に流れ着き、鎌倉に安置されて長谷寺が開かれたとされています。

鎌倉時代の証拠

文永元年(1264年)に鋳造された梵鐘の銘文には、当時の住職真光による勧進で鋳物師物部季重が製作したことが記されており、この時期には「新長谷寺」として長谷寺が存在していたことが確認されています。他にも、弘長2年(1262年)や徳治3年(1308年)の板碑、嘉暦元年(1326年)銘の懸仏など、鎌倉時代に遡る遺物が残されています。

歴代権力者による修復

近世の地誌『新編鎌倉志』や寺に伝わる『相州鎌倉海光山長谷寺事実』によれば、歴代の権力者が長谷寺の伽藍や本尊の修復を行っています。康永元年(1342年)には足利尊氏が伽藍と諸像の修復を行い、明徳3年(1392年)には足利義満が観音像の光背を修復しました。天文16年(1547年)には北条氏康の寄進を受け、天正19年(1591年)には徳川家康から朱印状を受けています。さらに、慶長12年(1607年)には堂塔伽藍の改修が行われ、正保2年(1645年)には酒井忠勝が堂宇の改修を行いました。

近世から現代への変遷

江戸時代初期、慶長12年(1607年)に徳川家康による伽藍修復を機に、長谷寺は浄土宗に改宗しました。住持玉誉春宗を中興開山として、新たな歴史が始まりました。さらに、太平洋戦争終戦後には浄土宗から独立し、現在では単立寺院としての姿を保っています。

境内

長谷寺の境内には、万灯祈願会(1月)などの行事が行われ、観音堂や阿弥陀堂などの主要な堂宇は、海を見渡す山腹に建てられています。これらの堂宇は関東大震災後に再建されたものです。境内には、文人とのゆかりが深く、高浜虚子の句碑や久米正雄の胸像、高山樗牛の住居碑なども見られます。

観音堂

観音堂には、長谷観音と呼ばれる十一面観音立像が安置されています。この像は奈良の長谷寺の観音像と同様に、右手に数珠と錫杖、左手に水瓶を持つ長谷寺式の像容をしています。

阿弥陀堂

阿弥陀堂は観音堂の右手に位置し、厄除阿弥陀と呼ばれる阿弥陀如来坐像が安置されています。この像は鎌倉六阿弥陀に数えられる一つで、源頼朝が造立したと伝えられていますが、実際には室町時代に制作されたものとされています。

大黒堂

観音堂の左手に位置する大黒堂には、鎌倉江ノ島七福神の一つとして祀られる大黒天像があります。元々の大黒天像は応永19年(1412年)に作られ、現在は新しい像が祀られています。

観音ミュージアム

2015年10月に開館した観音ミュージアムでは、重要文化財である梵鐘や十一面観音懸仏などが展示されています。

経蔵

輪蔵(りんぞう)と呼ばれる様式の経蔵があり、経典を納めるための施設です。

地蔵堂

参道の途中に建つ地蔵堂では、地蔵菩薩像が祀られています。

弁天堂

山門を入って右手に位置する弁天堂には、空海(弘法大師)が刻んだという伝承を持つ弁才天像が祀られています。弁天堂の近くには弁天窟もあります。

弁天窟

弁天堂前の放生池近くにある弁天窟は、弘法大師が参籠した地と伝わる洞窟です。洞窟内壁面には弁財天とその眷属である十六童子が彫られています。

かきがら稲荷

鐘楼脇にあるかきがら稲荷は、長谷観音像に付着していた蛎殻を祀る伝承があります。

本堂

山門に入る前の右手に位置する本堂は、平成に完成した純木造の建物で、主に法要に使用される非公開の施設です。

文化財

長谷寺には多くの文化財が存在しています。

重要文化財

懸仏(かけぼとけ)は、神の憑代としての円鏡の上に本地仏としての仏像を表した「御正体」の一種で、長谷寺には重要文化財に指定されている懸仏が6面あります。

木造十一面観音立像(本尊)

長谷寺の本尊である木造十一面観音立像は、像高9.18メートルの巨像で、日本有数の木造仏像です。この像は、後世の修復が多く、室町時代頃の作と推定されていますが、文明17年(1485年)や延宝5年(1677年)に修理が行われた記録があります。現在の光背は、1991年(平成3年)にアルミ製で再建されたもので、西村公朝の監修によるものです。この像は、「長谷寺式十一面観音(長谷型観音)」と呼ばれる様式を持ち、左手に水瓶、右手に数珠と地蔵菩薩の持つ錫杖を持ち、方形の磐石の上に立つ姿が特徴です。

アクセスと拝観情報

長谷寺は、江ノ島電鉄(江ノ電)長谷駅から徒歩5分、または京浜急行バスで「長谷観音」下車徒歩3分の場所にあります。拝観時間は季節によって異なり、3月から9月は8時から17時(閉山17時30分)、10月から2月は8時から16時30分(閉山17時)となっています。拝観料は大人400円、小学生200円です。

Information

名称
長谷寺(長谷観音)
(はせでら はせ かんのん)
リンク
公式サイト
住所
神奈川県鎌倉市長谷3-11-2
電話番号
0467-22-6300
営業時間

通常時間 8:00〜16:30(閉山17:00)
延長期間(4月~6月)8:00〜17:00(閉山17:30)

料金

大人 400円
小学生 200円

駐車場
有料
アクセス

江ノ電 長谷駅より徒歩5分

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