酒匂川は、静岡県および神奈川県を流れる二級河川です。静岡県内では鮎沢川（あゆざわがわ）とも呼ばれています。この川は、神奈川県において利水面で相模川に次ぐ重要な河川と位置づけられています。
酒匂川は、富士山の東麓および丹沢山地の西南部を主な源流とし、JR東海の御殿場線や東名高速道路と並行して流れます。その後、丹沢山地と箱根山の間を通り抜け、足柄平野を南下し、小田原市で相模湾へ注ぎます。この地域では、山間部から平野部へと川が流れ込む際に文命堤（岩流瀬堤、大口堤）が建設され、耕地を潤す役割を果たしています。
酒匂川の上流域、特に御殿場市付近では、富士山のなだらかな裾野が広がっており、流れは穏やかです。このエリアでは護岸工事が施され、典型的な河川の上流の雰囲気は感じられません。しかし、中上流域の小山町から山北町にかけての県境付近では谷が深く、大きな岩や石が見られ、渓流の趣きが感じられます。
酒匂川の中流域に入ると、丹沢山地と箱根山の間を抜け、平野部に広がっていきます。この地域では、文命堤などが建設され、川の流れを耕地に導く役割を果たしています。特に岩流瀬堤（がらせつつみ）は川の流れを断崖に導き、大口堤は断崖からの流れを平野中央に導いています。
酒匂川が足柄平野に入ると、川幅が広がり、周辺には水田や住宅地が広がります。この地域では、川が平野を潤す役割を果たしており、地元住民にとって重要な存在となっています。
酒匂川の流域には以下の自治体が含まれます:
酒匂川にはいくつかの主な支流があります:
酒匂川沿いには、以下の鉄道や道路が整備されています:
酒匂川沿いには以下の施設があります:
1707年（宝永4年）の富士山の宝永大噴火では、酒匂川流域に大量の火山灰が積もり、下流域では長年にわたり大雨の度に泥流に悩まされました。特に噴火の翌年、1708年の6月21日（8月7日）に発生した豪雨では、大規模な土石流が発生し、大口堤が決壊しました。この濁流は足柄平野を埋め尽くし、大きな被害をもたらしました。
1787年に酒匂川流域で生まれた二宮尊徳も、幼少期に繰り返された酒匂川の洪水で多くの困難に直面しました。彼の生涯には、この川との関わりが深く刻まれています。
1999年8月19日には、支流の玄倉川流域でダムの放流水によりキャンパーが流され、13人が亡くなる玄倉川水難事故が発生しました。2006年8月17日には、静岡県御殿場市や小山町で局地的な豪雨が発生し、鮎沢川では急激な水位上昇が起こり、多くの人々が逃げ遅れて流されました。2007年9月7日には、台風9号の影響で松田町の十文字橋が損壊し、翌年12月までかかって全面復旧が行われました。
さらに、2010年9月8日には再び台風9号が小山町や山北町を中心に豪雨をもたらし、多くの地域で護岸の決壊や洪水が発生しました。2019年10月11日から13日にかけては、令和元年東日本台風（台風19号）の影響により、酒匂川流域で大雨が降り注ぎ、72時間降水量が240ミリに達し、10月の記録を更新しました。
これらの災害は、酒匂川が自然災害に対していかに脆弱であるかを示しており、流域の防災対策が今後ますます重要になることを強調しています。