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震生湖

(しんせいこ)

震生湖は、神奈川県秦野市と足柄上郡中井町にまたがる美しい堰止湖で、関東大震災による地滑りで形成された自然の奇跡です。1923年(大正12年)の関東大震災によって生じたこの湖は、地震の巨大な力を物語る貴重な自然遺産として、国の登録記念物にも指定されています。

震生湖の誕生

1923年9月1日に発生した関東大震災は、広範囲にわたって甚大な被害をもたらしましたが、その余波で形成されたのが震生湖です。この地震によって、湖が位置する大磯丘陵の一部が崩壊し、約200メートルにわたる地滑りが発生しました。その結果、市木沢(いちきさわ)の最上部がせき止められ、そこに水が溜まって湖が形成されました。震生湖の東側には、崩壊した跡が今もなお残されており、地震発生時の地形変化を如実に物語っています。

地質学的な特徴

震生湖の周辺には、約6万6千年前に堆積した東京軽石層が広がっており、この層が風化して粘土状鉱物のハロイサイトに変化し、滑りやすい地層となりました。こうした地質学的な条件が重なり、関東大震災時に大規模な地滑りを引き起こし、湖が誕生しました。このため、震生湖は地震学や地質学の研究対象となり、当時の地震の影響を後世に伝える貴重な資料として注目されています。

震生湖の観光利用

震生湖とその周辺は、震生湖公園として整備され、自然豊かな環境で多くの観光客を魅了しています。春にはスイセンやソメイヨシノが湖畔を彩り、秋には紅葉が見事な景観を作り出します。また、湖はハイキングや釣りの名所としても親しまれており、週末や休日には家族連れやカップルなど多くの人々で賑わいます。

寺田寅彦の歌碑

震生湖には、日本を代表する物理学者であり随筆家の寺田寅彦が訪れた際に詠んだ句「山さけて成しける池や水すまし」が刻まれた歌碑が湖畔に建てられています。彼は、1930年にこの地を訪れ、震生湖の美しい景観とその成り立ちに深い感銘を受けました。この歌碑は、当時の地震の影響を後世に伝える象徴として、多くの人々に親しまれています。

震生湖に生息する生物

震生湖には、コイ、ヘラブナ、ブラックバス、ブルーギル、オイカワ、アメリカザリガニ、ミドリガメなど、さまざまな生物が生息しています。これらの魚種は、釣り人にとっての人気ターゲットとなっており、湖では四季を通じて釣りが楽しめます。

震災と湖にまつわるエピソード

震災当時、この地域では多くの災害が発生しました。震生湖の形成と同時に、付近の峰坂では道路の崩壊があり、下校途中の小学生2名が巻き込まれて行方不明となりました。地元住民による懸命な捜索が行われましたが、残念ながら二人は見つからず、その供養のために湖の入口には供養塔が建立されています。

湖の規模と水質

震生湖は、面積が13,000平方メートル、周囲約1,000メートル、水深は平均4メートル、最大で10メートルに達します。湖には流入河川や流出河川がなく、地下水脈によって周囲の水系とつながっています。このため、外部からの水質汚染の影響を受けにくく、湖の水は比較的清浄です。しかし、1980年代には雨水に由来する揮発性有機化合物が微量に検出されたことがあります。

交通アクセスと駐車場

震生湖へのアクセスは、電車とバスを利用するか、車での訪問が可能です。最寄りの秦野駅からは徒歩約50分、または神奈川中央交通西の路線バス(秦15系統)を利用して「震生湖」バス停で下車します。(平日は1往復のみ運行)車でのアクセスは、秦野中井インターチェンジより約10分です。

駐車場の整備

市営駐車場は、バス停近くの道路沿いと湖畔の2か所に設置されています。以前は、湖畔の駐車場へ向かう道が私道であったため、通行を巡るトラブルが発生していましたが、地権者がこの私道を市に寄付することで問題は解決し、現在では安心して利用することができます。

震生湖は、関東大震災が生み出した貴重な自然遺産として、その歴史的な背景と美しい自然景観で訪れる人々を魅了しています。湖畔を散策しながら、震災の記憶に思いを馳せることができるこの場所は、今もなお多くの人々に愛されています。

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名称
震生湖
(しんせいこ)

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