横浜市電保存館は、神奈川県横浜市磯子区滝頭三丁目に位置し、1972年(昭和47年)3月に廃止された横浜市交通局の路面電車、通称「横浜市電」に関する資料を保存・展示している施設です。この保存館は、一般財団法人横浜市交通局協力会が運営しており、市民や観光客に向けて歴史的な資料や車両を公開しています。
横浜市電は、1972年(昭和47年)3月31日にその運行を終え、全廃されました。それに伴い、1973年(昭和48年)8月25日には、滝頭車両工場の跡地に横浜市電保存館が開館しました。ここでは、市電の車両7両と関連する部品や備品が保存・展示され、かつての市電の姿を今に伝えています。
1982年(昭和57年)には、改築のため一時閉鎖されましたが、翌年1983年(昭和58年)8月13日に市営住宅の1階に再開館しました。この再開館に際し、「トラムポート」という愛称が付き、新たに鉄道模型コーナーも設置されました。これは港北区仲手原在住の鉄道模型コレクター・吉村栄氏の遺族から寄贈された鉄道模型を展示するもので、展示館の目玉の一つとなりました。
さらに2003年(平成15年)1月18日にはリニューアルオープンし、その後も横浜市電保存館は進化を続け、2007年(平成19年)には、生麦線開業時に建てられたとされる架線用ポールが正面ゲート横に設置されました。このポールには、横浜大空襲時の被弾跡とされる痕跡も見られます。
2016年(平成28年)には、駐車場内に多目的ホール「しでんほーる」がオープンし、さらに2017年(平成29年)には、磯子区制90周年を記念してリニューアルオープンしました。同年9月23日には「復活!花電車しでん祭り」が開催され、市電全廃以来45年ぶりとなる花電車の展示が行われました。また、2023年(令和5年)には開館50周年を記念し、鉄道ジオラマが「ハマジオラマ」として一新されました。
館内では、かつて横浜市電で使用された車両が多数展示されています。特に注目すべきは以下の車両です:
また、歴史展示コーナーや映像シアター、横浜駅東口の大時計、横浜市電の運転シミュレーター、「ハマジオラマ」なども見どころの一つです。特に「ハマジオラマ」は、開館50周年を記念してリニューアルされたもので、その精巧さと規模は多くの来館者を魅了しています。
鉄道模型コレクションも展示されており、吉村栄氏が40年かけて制作・収集した鉄道模型の一部が展示されています。また、Nゲージ鉄道模型レイアウトもあり、自分の車両を走らせることができるため、鉄道ファンにはたまらないスポットとなっています。
2022年には、横浜市中区鷺山の銭湯「さくら湯」から、駐車場の隅に長年置かれていた「山一」の刻印があるレールの寄贈を受けました。このレールは横浜市電のものであると考えられ、保存館の貴重な展示品の一部となっています。
横浜市電保存館は、テレビ番組でも度々紹介されており、特にテレビ朝日の紀行番組「ちい散歩」で地井武男氏が訪問したことがあります。また、他のメディアでも取り上げられ、その魅力が広く伝えられています。