横浜人形の家は、神奈川県横浜市中区山下町に位置する、世界各国の人形を展示する博物館です。館内には、141カ国以上から集められた1万3千点を超える人形が所蔵されており、人形に関する資料も豊富に揃っています。横浜市が保有するこの施設は、丹青社・東急コミュニティー共同事業体によって運営されています。
「横浜人形の家」の設立は、著名な実業家御木本幸吉の秘書兼通訳を務めた大野英子による人形コレクションが発端となっています。彼女は、約2000体の人形を横浜市に寄贈し、1978年3月に横浜市中区山下町にある産業貿易センタービル内の横浜国際会議場に展示場「人形の家」が設けられました。大野の寄贈した人形や、1927年にアメリカから寄贈され、1980年に横浜市に移管された「青い目の人形」ブロッソンが展示されたことが、施設の基盤となりました。
1981年に新しい「人形の家」を建設する計画が持ち上がり、1984年に着工されました。1986年6月1日に、坂倉建築研究所の設計と竹中工務店・日成建設の施工により、現在の横浜人形の家が開館しました。この施設は1987年に日本建設業連合会主催の第28回BCS賞を受賞するなど、建築面でも高い評価を受けています。
展示コンセプトは「横浜発・世界の人形ふれあいクルーズ」と題されており、常設展示室のほか、企画展示室や人形劇を開催する「あかいくつ劇場」、ショップやカフェなどが設けられています。開館当初の館長は、テレビ番組で広く知られる兼高かおるが務め、続いて俳優の石坂浩二が2006年から2010年まで2代目館長を務めました。現在は、著名人以外の専門家が館長を務めています。
開館から10年以上が経過し、保存環境による収蔵品への影響が見られたため、2006年には施設の増築とともに温湿度管理設備を含む全面改修工事が行われました。さらに、2010年2月には常設展示室がリニューアルされ、おもちゃ研究家の北原照久がプロデュースを担当しました。
リニューアルされた常設展示室では、「青い目の人形」やアメリカに贈られた市松人形のレプリカである答礼人形、平田郷陽による作品、日本や世界141カ国の民族人形、江戸後期以降のからくり人形、雛人形、ヨーロッパのビスク・ドールなど、貴重な人形が展示されています。これらの人形は、各種イベントにも貸し出されることがあります。
2013年度には、この施設が第13回日本建築家協会25年賞を受賞し、開館から四半世紀にわたり高い評価を維持しています。
横浜人形の家の前には、1986年に竣工した「ポーリン橋」が山下公園方面に向かって架けられています。この橋の手前には、西前小学校に寄贈された青い目の人形「ポーリン」の銅像が設置されています。さらに反対側には「フランス橋」が架かっており、こちらは中村川を渡って港の見える丘公園へと続いています。
横浜人形の家へは、JR根岸線の石川町駅や関内駅から徒歩でアクセス可能です。また、横浜市営地下鉄ブルーラインの関内駅や桜木町駅からも徒歩圏内です。施設は、周辺の観光地ともアクセスが良く、横浜の観光の一環として訪れることができます。