日本基督公会は、1872年3月10日（旧暦明治5年2月2日）に横浜公会（よこはまこうかい）として設立されたプロテスタント教会です。現在は、日本キリスト教会・横浜海岸教会として知られています。この教会は、日本におけるプロテスタントの歴史において重要な役割を果たし、多くの信者にとっての精神的な支えとなってきました。
日本基督公会の創設にあたっては、「公会の基礎」として以下のような理念が掲げられました。「我輩の公会は宗派に属せず。ただ主イエス・キリストの名に依て建る所なれば、単に聖書を標準とし、是を信じ、是を勉むる者は、皆是キリストの僕（しもべ）、我等の兄弟なれば、各中の各員全世界の信者を同視して一家の親愛を尽くすべし。是故にこの会を日本基督公会と称す。」この理念は、教会が特定の宗派に属さず、イエス・キリストを信じるすべての者を兄弟姉妹とし、広く信仰を共にすることを目指したものです。
日本基督公会の創設者であるジェームス・ハミルトン・バラは、1861年（文久元年）に日本に来日した改革派宣教師であり、彼は1868年（明治元年）に現在の横浜海岸教会が位置する居留地167番に小さな会堂を建てました。この会堂は、外側が斑入りの伊豆石で作られた小屋であり、「聖なる犬小屋」とも呼ばれていました。その後、1872年の創立時には使徒信条に基づいて公会定規が作成され、1873年（明治6年）には東京に姉妹教会（現、日本キリスト教団新栄教会）が設立されました。
1874年（明治7年）には、日本基督公会として正式に名を改め、福音同盟会の9ヶ条を信仰箇条として採用しました。これにより、日本における長老派教会の簡易信条主義が始まったとされています。しかし、福音同盟会の9ヶ条はもともと教会の信仰箇条として意図されたものではなく、超教派での働きのための教理基準であったため、この採用は議論を呼びました。
1872年3月10日の教会形成時、日本人信徒は9名の青年と2名の中年男性、計11人で構成されていました。このとき、J・H・バラが仮牧師となり、青年長老として押川方義や篠崎桂之助、中年男性としては小川義綏が長老、仁村守三が執事に任命されました。バラは奨励し、長老按手式を行うことで、教会の基盤を固めました。
日本基督公会の流れは、後に「横浜バンド」と呼ばれるようになり、日本の長老派教会と教会合同に引き継がれました。この合同の理念は、日本基督教会において「公会主義」として理想化され、合同教会である日本基督教団の形成へとつながりました。しかし、エキュメニズムに反対する立場の渡辺信夫は、この公会主義の存在を否定しており、また、日本基督公会は長老制を採用する改革派と長老派という同質の教会であったため、公会主義を強調するのは無理だとの指摘もあります。
日本基督公会は、1877年10月3日に設立された日本基督一致教会に継承されましたが、日本基督一致教会は簡易信条主義を採らず、歴史的なプロテスタントの信仰告白を持つ信条教会として発展しました。1875年（明治8年）には教会堂が建設され、「横浜海岸教会」として改称されました。しかし、1923年（大正12年）の関東大震災によって教会堂は消失するという悲劇に見舞われました。
関東大震災で消失した教会堂は、震災から10年後の1933年（昭和8年）に再建されました。この再建された教会堂は、1945年（昭和20年）の戦災を免れ、無傷で残りました。戦後、この教会堂は進駐軍による集会「GI・ゴスペル・アワー」の会場としても使用され、多くの人々にとっての信仰の場となりました。
その後、1949年（昭和24年）には、堀ノ内キリスト教会や四日市長老教会とともに「日本基督長老教会」を設立しましたが、この教会は翌年1950年に解散しました。その後、横浜海岸教会は日本キリスト教会に再編され、現在もその伝統を受け継ぎながら活動を続けています。
横浜海岸教会は2015年（平成27年）、再建から82年ぶりに大規模な改修工事が行われました。この改修工事により、教会はより一層の保存と安全性を確保しました。改修完成を祝う礼拝は2015年5月10日に行われ、これを機に教会は毎月1回一般公開されるようになりました。これにより、より多くの人々が教会の歴史と文化を直接感じることができるようになりました。
日本基督公会は、日本におけるプロテスタント教会の歴史と発展に大きな影響を与えた存在です。横浜海岸教会としての歩みを通じて、教会は数々の困難を乗り越えながらも、その信仰と理念を堅持してきました。現在も、教会は歴史的な建物としての価値を保ちつつ、多くの人々に愛される信仰の場として存在しています。横浜を訪れる際には、ぜひこの教会を訪れ、その歴史と美しさを感じてください。