片瀬西浜海水浴場は、神奈川県藤沢市片瀬海岸二丁目・三丁目、鵠沼海岸一丁目・二丁目に位置する日本最大級の海水浴場です。
この海水浴場は、藤沢市の南部にある境川河口から引地川河口までの全長1,020m、奥行き平均150mの広大な遠浅の砂浜に広がっています。年間300万人以上の来客数を誇り、国内最大規模の海水浴場として知られています。
鵠沼海岸海水浴場は1886年（明治19年）に開設され、長い歴史を持っていますが、片瀬西浜海水浴場は1947年（昭和22年）以降に開設されました。1956年（昭和31年）に片瀬西浜と鵠沼海岸の両海水浴場を統合した「江の島海水浴場協同組合」が設立されて以来、一体化した海水浴場として発展を遂げてきました。
片瀬西浜は、東隣の片瀬東浜海水浴場と比べて波が若干荒く、日本におけるサーフィン発祥の地とされています。ただし、海水浴シーズン中は、海水浴場区域内でのサーフィンは禁止されています。また、バーベキュー、キャンプ、個人的な花火、水上オートバイなどの行為も禁止されています。
海水浴場は、7月1日の海開きから8月いっぱいまで、午前8:00から午後5:00まで開設されています。この期間中、26軒の「海の家」が並び、8か所にトイレが設置されています。また、15軒の飲食店や10軒の売店、浮き輪やボート、パラソル、サマーベッドの貸出店が28軒出店します。安全管理は「西浜サーフライフセービングクラブ」が主に担当しています。
海岸の美化については、1990年代以降、財団法人かながわ海岸美化財団の調整のもと、各種団体によるビーチクリーンのボランティア活動が活発に行われており、機械力も導入されています。しかし、環境省の水浴場水質検査では「B」（可）と判定され、あまり好ましい結果ではありません。この要因の一つには、サンオイルを落とさずに海に入る不心得な人々の存在が挙げられます。
鵠沼海岸一帯は、明治中期まで地曳き網の漁場があるだけの無人地帯でした。この地域は、江戸時代には幕府の相州炮術調練場（鉄炮場）であり、その名残が影響していました。1886年（明治19年）7月18日、漢方医の三留栄三の提唱により「鵠沼海岸海水浴場」が開設されましたが、三留医師は海水浴場開きの当日に不慮の事故で亡くなりました。
その後、旅館「鵠沼館」が開業し、さらに「対江館」や「東屋」といった旅館も次々とオープンしました。また、鵠沼南部の農家が貸別荘風の家作を建て始めるなど、海水浴場周辺は急速に発展していきました。1901年（明治34年）には画家の川合玉堂が対江館を訪れ、海水浴場の風景を描いた『清風涼波』を制作しました。
一方、この頃鵠沼で少女時代を過ごした小説家の内藤千代子は、海水浴場の賑わいと「板子乗り」の楽しさを描写しています。1902年（明治35年）には江ノ島電氣鐵道が開通し、鵠沼海岸別荘地の開発が本格化するとともに、海水浴場へのアクセスも向上しました。
1923年（大正12年）の関東大震災により、鵠沼海岸では約90cmの地盤隆起が発生し、砂浜の面積が拡大しました。この砂浜拡大に伴い、飛砂の被害が発生し、1928年（昭和3年）には湘南海岸一帯にクロマツの植林が行われました。
1929年（昭和4年）には小田急江ノ島線が開通し、鵠沼海岸駅・片瀬江ノ島駅が開業。湘南海岸の観光地化が進みました。1931年（昭和6年）には「鉄道省海の家」が鵠沼海水浴場に開設され、藤沢駅と海の家を結ぶバス路線も開通しました。
1947年（昭和22年）に片瀬町が藤沢市に編入されたことで、片瀬西浜と鵠沼を一体化して開発する基盤が整いました。この時期に片瀬西浜が本格的に海水浴場として整備され始め、1956年（昭和31年）には「江の島海水浴場協同組合」が創立されました。
1951年（昭和26年）には、米軍の影響で片瀬西浜は「GIビーチ」と呼ばれるようになり、後に藤沢市が「東洋のマイアミ」として売り出すきっかけとなりました。1957年（昭和32年）には藤沢市が「東洋のマイアミ」として片瀬・鵠沼地区を宣伝し、1963年（昭和38年）には「湘南ライフガードクラブ」が設立され、日本初のライフガード組織が誕生しました。
1964年（昭和39年）には東京オリンピックのヨット競技が江の島で開催されることが決まり、片瀬の海水浴場は大いに賑わいました。しかし、1969年（昭和44年）には湘南海岸で大腸菌騒動が発生し、来客数が大幅に減少しました。
7月1日の海開きから始まり、7月中旬には「湘南江の島海の女王＆海の王子コンテスト」が片瀬海岸西浜特設ステージで開催されます。また、7月海の日にはビーチバレーの記念大会が湘南鵠沼常設コートで行われます。
8月第1火曜日には「江の島花火大会」が片瀬海岸西浜で開催され、8月上旬から中旬にかけてはビーチバレーの大会が続きます。その他、片瀬海岸西浜特設ステージや各海の家では、音楽やお笑いのライブが随時行われます。
片瀬西浜・鵠沼海水浴場へのアクセスは、新宿駅方面から小田急江ノ島線で片瀬江ノ島駅まで、または藤沢駅や鎌倉駅から江ノ島電鉄線を利用し、徒歩でのアクセスが可能です。バス利用もできますが、