神奈川県水道記念館は、神奈川県高座郡寒川町に位置する科学館であり、神奈川県の水道事業における重要な歴史を伝える施設です。この記念館は、日本で初めて県営による広域水道を実現した寒川浄水場の旧送水ポンプ所を活用して建設されました。また、厚生省が企画した「近代水道百選」にも選定され、その歴史的価値が認められています。
神奈川県水道記念館は、県営水道創設50周年を記念して1984年(昭和59年)に開館しました。この記念館は、老朽化した寒川第一浄水場の送水ポンプ所を改装し、「水」をテーマとした科学館として新たに生まれ変わりました。2003年(平成15年)には、創設70周年を迎えたことを機にリニューアルオープンし、現在の形に至っています。
寒川浄水場は、湘南地域の急速な発展と、それに伴う水需要の増加に対応するため、そして皇室の御用邸が葉山にあることから、その水道供給の確保と衛生状態の改善を目的として設立されました。1933年(昭和8年)には、相模川下流域の伏流水を利用し、最も経済的な水道布設案が県議会に承認され、寒川村で浄水場の建設が開始されました。その後、1936年(昭和11年)に工事が完了し、湘南地域全体に安定した水の供給が可能となりました。
1985年(昭和60年)には、厚生省が企画した「近代水道百選」に、旧送水ポンプ所が選定されました。この施設は、神奈川県庁本庁舎などと同様に、スクラッチタイル貼りの外壁を持ち、昭和初期の官庁建築の特徴を色濃く残しています。また、2013年(平成25年)には「土木学会選奨土木遺産」にも認定され、その歴史的価値が再び評価されました。
館内には「アルキメデスのポンプ」や「サイホンの原理」など、科学の基本原理を楽しく学べる体験型の展示が多く設置されています。また、水や環境に関する資料が豊富に揃う図書室も併設されており、訪れる人々にとって教育的価値の高い施設となっています。さらに、隣接する寒川浄水場から給水された新鮮な水を無料で飲むことができるコーナーもあり、地域の水道事業の成果を実感することができます。
館外には「水の広場」と呼ばれるエリアがあり、ここではせせらぎが流れ、訪れる人々に癒しの空間を提供しています。このせせらぎは、相模川をイメージしてデザインされており、その両脇には神奈川県内の各市町村の「木」が植えられています。広場の入り口には、神奈川県営水道創設50周年を記念して寄贈された噴水があり、その水しぶきは訪問者を迎えるシンボルとなっています。
神奈川県水道記念館は、平日(月曜日を除く)と土日祝日に開館しています。ただし、月曜日および年末年始(12月29日から1月3日)、そして2月第4週の月曜日から金曜日は休館となりますので、訪問の際には注意が必要です。
開館時間は午前9時30分から午後4時30分までとなっており、ゆっくりと見学する時間が確保されています。また、入館料は無料で、多くの方々に開かれた施設となっています。
神奈川県水道記念館を訪れた際には、近隣の観光スポットも合わせて訪れることをお勧めします。特に、寒川神社参道は「かながわの美林50選」にも選ばれており、美しい自然を楽しむことができます。また、寒川浄水場や一之宮公園なども近くにあり、地域の歴史や自然を満喫できる場所が豊富にあります。
神奈川県水道記念館へのアクセスは、JR相模線の宮山駅または寒川駅から徒歩で向かうことができます。また、車で訪れる場合は、圏央道の寒川北ICが最寄りのインターチェンジとなります。バスをご利用の場合は、神奈川中央交通や相鉄バスの「寒川郵便局前」バス停が便利です。