古く万葉集にも詠まれた湯河原温泉に、多くの文人が親しく訪れ始めたのは明治中ごろから。夏目漱石は遺作「明暗」でも有名な、旅館「天野屋」に1915年11月と翌年1月に滞在し、国木田独歩は旅館「中西屋」で3つの短編小説を書き上げ、小林秀雄も「加満田旅館」で執筆、島崎藤村は旅館「伊藤屋」、芥川龍之介は旅館「中西屋」で保養した。また旅館「藤田屋」は、東郷平八郎元帥ゆかりの宿として有名だ。そんな多くの文人たちを魅了した名旅館の料理は、昔から相模湾・駿河湾、海と山に恵まれるの豊富な食材を利用し、四季折々の味わいを提供している。