箱根・宮ノ下温泉の国道1号線沿いに位置する、1878年(明治11年)に創業された日本でも有名なクラシック ホテルです。現在もその歴史を刻んでいます。
外国人を対象とした本格的なリゾートホテルを目指して創業して以来、外国人客の宿泊が盛んであり、19世紀末には外国人専用ホテルとして指定されました。
そのため、日本文化の展示や工夫も行われ、日本の建築様式や美術が見事に取り入れられた美しい豪華なホテルです。数多くの彫刻や調度品が歴史を感じさせる魅力的な空間です。
本館は富士屋ホテルで最も歴史のある建物であり、特徴的な瓦葺きの屋根や唐破風を取り入れた和洋折衷の木造建築で、明治時代の建築様式を現代に伝えています。
内装も当時のまま残っているので、まるで過去にタイムスリップしたかのような気分に浸ることができます。
富士屋ホテルのシンボルである花御殿は、1936年に3代目の山口正造が自ら設計した建物です。その千鳥破風と呼ばれる屋根の形状は、日本の城のような豪華さを感じさせます。
また、朱色の装飾も取り入れられており、印象的な建物となっています。本館から花御殿へは室内の渡り廊下を通って移動することができます。
花御殿という名前に合わせて、43室の客室それぞれに花の名前が付けられ、部屋の鍵やドアには花のモチーフが美しく描かれています。「フラワーパレス」として外国人客に親しまれてきました。
なお、本館、花御殿、食堂、菊花荘などは、国の登録有形文化財に指定されています。
富士屋ホテルは昭和天皇やタイ国王、オーストリア皇太子などの皇族や王族だけでなく、ウィンストン・チャーチルやヘレン・ケラー、チャーリー・チャップリンなど、国内外の著名人にも愛されてきました。
また、別館にはジョン・レノンとオノ・ヨーコが滞在したこともあり、ホテル内のツアーでその部屋を見学することができます。
第二次世界大戦終結直前の1945年には、連合国軍の東京への空襲から避難するために、ドイツや満州国、中華民国などの同盟国の大使館員や武官などが富士屋ホテルを宿舎として使用しました。
一部の客室や共同部分はリニューアルされずに営業を続けていましたが、施設や建物の老朽化に伴い、2018年に一時的に休業しました。その後、大浴場の設置や建物の耐震改修工事、一部の食堂棟の建て替えなどを行い、2020年にグランドオープンしました。
他にも1930年に建てられたレストラン棟や広大な自然庭園など、見どころがたくさんあります。
ホテルの手前には写真館があります。この写真館は、ヘレン・ケラーやジョン・レノン夫妻が来日し、富士屋ホテルに宿泊した際に写真撮影をした場所です。
宿泊だけでなく、レストランでのランチやティータイムなどでもその雰囲気を存分に楽しむことができます。ぜひ訪れて、富士屋ホテルの魅力を存分に味わってください。
施設
- 本館: 12室の客室、フロント、ラウンジ
- 西洋館: 21室の客室
- 花御殿: 40室の客室、ホテル・ミュージアム(史料展示室)、屋内プール、ジム、チャペル、ブライダル・サロン
- フォレスト・ウイング: 47室の客室、スパ&リラクゼーション、宿泊者専用ラウンジ
- 食堂棟: メインダイニングルーム、バー、ホテル・ショップ
- カスケード・ウイング: レストラン、小宴会場、テナント他
- 別館 旧御用邸 菊華荘: レストラン(日本料理)、貸切風呂、日本庭園
- 他施設: ベーカリー&スイーツ ピコット、庭園、屋外プール(夏季のみ)、駐車場
沿革
- 1878年(明治11年)7月15日: 山口仙之助が藤屋旅館を買収・改装し、神奈川県足柄下郡底倉村に開業されました。
- 1883年(明治16年): 火災により焼失しました。
- 1884年(明治17年): 平屋建ての客室12室として再建され、「アイリー」と命名されました。
- 1887年(明治20年): 富士屋ホテルは有料の人力車道を塔ノ沢から宮ノ下まで開通させました。
- 1891年(明治24年): 本館が竣工されました。
- 1893年(明治26年): 富士屋ホテルは外国人専用ホテルとして指定され、オーストリア皇太子一行が宿泊されました。
- 1930年(昭和5年): 山口正造により富士屋ホテルトレイニングスクールが設立されました。
- 1931年(昭和6年): タイ王国国王と王妃が滞在されました。
- 1932年(昭和7年): チャールズ・チャップリンがご来館されました。
- 1935年(昭和10年): アイリーが現在の場所に移転され、英国高等領事裁判所判事のモソップ氏と香港最高裁判所長官のマクレガー氏が宿泊されました。
- 1936年(昭和11年): 花御殿が竣工され、ヘレン・ケラーが宿泊されました。
- 1944年(昭和19年): 富士屋ホテルは連合国の大使館員や武官の宿舎として指定されました。
- 1945年(昭和20年): 富士屋ホテルは連合国軍のレストホテルとして接収されました。
- 1946年(昭和21年): 高松宮家別邸(旧宮ノ下御用邸)が払い下げられ、菊華荘となりました。
- 1950年(昭和25年)12月8日: 政府登録国際観光旅館として認められました。
- 1954年(昭和29年): 一般自由営業が再開され、外国通貨両替業務が許可されました。
- 1965年(昭和40年)4月20日: 昭和天皇が宿泊されました。
- 1966年(昭和41年): 国際興業グループに株が譲渡され、山口一族による経営は終わりました。
- 1990年: 国際興業グループのHawaii Sheraton Hotelsでの海外ホテルマネジメント研修が開始されました。
- 1997年(平成9年)12月12日: 本館、一号館、二号館、アイリー、花御殿、食堂、菊華荘が登録有形文化財として認められました。
- 2003年(平成15年): 婚礼事業の活性化により、毎年の婚礼組数が増加しました。
- 2007年(平成19年)11月30日: 富士屋ホテルは近代化産業遺産群「富士屋ホテルと箱根観光関連遺産」として認定されました。
- 2018年(平成30年)4月1日: 耐震補強・大規模改修工事のため一時的に休業されました。
- 2020年(令和2年)7月15日: 富士屋ホテルが営業再開されました。