總持寺は、神奈川県横浜市鶴見区鶴見二丁目に位置する、曹洞宗の仏教寺院です。この寺院は、福井県の永平寺と並び、日本曹洞宗の中心寺院（大本山）として広く知られています。1911年に石川県鳳至郡門前町から現在の場所に移転されました。山号は「諸嶽山」（しょがくさん）であり、本尊として釈迦如来が祀られています。また、寺の紋章は五七桐紋です。
總持寺の起源は、能登国櫛比庄（現在の石川県輪島市）に存在した真言律宗の教院「諸嶽観音堂」にさかのぼります。1321年（元亨元年）、曹洞宗4世の瑩山紹瑾が、諸嶽観音堂の住職である定賢から請われて入院し、同年に寺号を「總持寺」、山号を「諸嶽山」に改名しました。これにより、諸嶽観音堂は禅院として新たな道を歩み始めました。
1322年（元亨2年）には、後醍醐天皇より「曹洞賜紫出世第一の道場」として官寺に認定され、大本山となりました。その後、住職は5つの塔頭（普蔵院、妙高庵、洞川庵、伝法庵、如意庵）からの輪番制で行われました。1615年（元和元年）には、徳川幕府から法度が出され、永平寺と並ぶ大本山としての地位を確立しました。
1898年（明治31年）、火災により總持寺は大きな被害を受けました。しかし、1911年（明治44年）には、現在の神奈川県横浜市鶴見区に移転し、新たな歩みを始めました。この移転と同時に、總持寺は「總持寺祖院」として石川県輪島市門前町の旧地も保持しています。
その後、總持寺は横浜市鶴見区における広域避難場所の1つとして指定されるなど、地域社会において重要な役割を果たしています。また、1911年には国際オリンピック大会選手予選会の10000m走のスタート地点としても利用されました。
總持寺の敷地面積は約50万平方メートルに及び、境内には仏殿や大祖堂をはじめ、多くの堂宇が立ち並んでいます。特に仏殿には本尊である釈迦如来像が安置されていますが、歴代の祖師を祀る大祖堂はさらに大規模であり、總持寺の特徴的な存在です。また、鶴見大学などの学校施設も境内に設けられています。
1911年の移転後、總持寺の多くの建物は20世紀前半に建立された本格的な木造建築です。これらの建物は、大正時代から昭和時代前期にかけて建てられたものであり、傳統的な日本建築の美しさを今に伝えています。
總持寺の大祖堂や三門などの建物は、太平洋戦争後に鉄筋コンクリート造で再建されました。これにより、耐久性が向上し、多くの参拝者が訪れる現代の姿へと変貌しました。また、1970年（昭和45年）には火災により常照殿が焼失しましたが、その後再建が進められました。
さらに、2005年（平成17年）には仏殿を含む16件の建造物が登録有形文化財に指定され、歴史的価値が認められました。これにより、總持寺は歴史的・文化的遺産としても重要な位置を占めています。
境内には、横浜市で発生した鉄道事故である桜木町事故（1951年）と鶴見事故（1963年）の慰霊碑が建てられており、これらの事故で亡くなった方々の霊を慰めています。さらに、太平洋戦争中には東京警備軍横浜警備隊が置かれ、1945年（昭和20年）8月には終戦反対の反乱が起こるなど、戦争の記憶も残されています。
總持寺の総門である三松関は、「三樹松関」とも称され、總持寺中興の祖とされる石川素童禅師による揮毫が施されています。この門は、能登にある龍の形をした三本の松の木に由来しており、高麗門の建築様式を採用しています。総門の右側には新到安下所があり、左側には延命地蔵尊が祀られています。
1969年（昭和44年）に完成した三門は、鉄筋コンクリート造りでは日本一の大きさを誇ります。三門の左右には金剛力士（仁王）像が置かれ、元横綱・北の湖の15歳の姿をモデルにしたと伝えられています。三門楼上には、観音菩薩像や地蔵菩薩像、十六羅漢像および四天王像が祀られています。
總持寺には、この他にも様々な建造物が存在します。例えば、1990年（平成2年）竣工の三松閣は、鉄筋コンクリート造りの切妻造で、檀信徒研修道場や宿泊施設が設けられています。また、香積台は総受付として機能しており、禅門での食事を調理する「庫院」を意味しています。
2006年（平成18年）竣工の慈峰閣は、總持寺の総合寺務室としての機能を有し、修行僧の部屋や典座寮などが設けられています。また、紫雲臺は、總持寺の住持・禅師が使用する大書院であり、禅師の尊称にもなっています。
總持寺には、多くの重要文化財が存在します。例えば、「紙本著色提婆達多像」や「絹本著色前田利家夫人像」などの絵画作品がその一例です。また、總持寺の建造物の一部も登録有形文化財に指定されています。これには、三松関や仏殿、百間廊下などが含まれます。
總持寺には、数多くの著名人の墓所があります。例えば、実業家の浅野総一郎や俳優の石原裕次郎、プロレスラーのアントニオ猪木などがその一例です。これらの墓所は、總持寺が多くの人々から尊敬されている証と言えるでしょう。
總持寺は、歴史と文化が息づく場所であり、多くの人々にとって心の拠り所となっています。その壮大な伽藍や豊かな文化財は、日本の仏教文化を深く理解するための貴重な財産です。ぜひ一度、總持寺を訪れて、その歴史と文化に触れてみてください。