城山ダムは、神奈川県相模原市緑区に位置し、相模川本川に建設された重力式コンクリートダムです。このダムは、神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市の4自治体による共同施設であり、地域における水資源の管理や洪水調節に重要な役割を果たしています。
城山ダムの高さは75メートルで、その主な目的は相模川の洪水調節、横浜市、相模原市、川崎市、湘南地域への上水道・工業用水の供給です。相模川本川の寒川取水堰から相模原沈殿池を経由し、これらの地域へ水が供給されています。また、宮ヶ瀬ダムや道志ダムとの間で貯水を融通することで、効率的な水運用が行われています。
城山ダムは揚水発電用のダムとしても利用されています。1965年に建設された神奈川県営城山発電所は、日本初の大規模な純揚水式発電所です。この発電所では、夜間に城山ダム湖（津久井湖）から境川の本沢ダム湖へ水を汲み上げ、昼間の電力消費が増加する時間帯にその水を利用して発電しています。このような発電所は、通常は電力会社によって運営されることが多いですが、城山発電所は地方自治体によって運営されているため、非常に珍しいケースです。
城山ダムの天端（ダムの最上部）は、国道413号が通過しており、城山大橋とも呼ばれています。この国道は、相模原市の中心部へ通じる主要幹線道路であり、JR横浜線の橋本駅などへのアクセスにも利用されています。ダムが主要道路として利用されるのは全国的にも珍しい事例です。
「相模川河水統制事業」の一環として、相模川には既に1947年に相模ダムが建設されていました。しかし、神奈川県内での人口急増に伴い、新たな水源確保が必要となりました。この状況を受けて、神奈川県は相模川に新たなダムを建設することを決定し、城山ダムの建設が1965年に完了しました。
城山ダムの完成により形成されたダム湖は「津久井湖」と命名されました。津久井湖は都市部に近接しているため、多くの観光客が訪れるレジャースポットとしても知られています。しかし、ダム建設により多くの家屋が水没することとなり、住民の移転をめぐる補償交渉では、代替地の宅地造成が行われました。この補償手法は、後に水源地域対策特別措置法のモデルとなりました。
津久井湖は、満水時には上流にある沼本ダムに達し、その堤体下部を水没させることがあります。また、湖の中央には「三井大橋」が架かっており、この橋は「かながわの橋100選」に選ばれるなど、景観的にも優れた存在です。さらに、津久井湖城山公園内には、ダム工事で殉職した13名を称える慰霊碑が建立されています。
城山ダムが形成する津久井湖は、周囲に住宅地が広がっていることから、生活排水の流入による富栄養化が問題となっています。このため、湖水のアオコ発生が頻繁に見られ、水質汚濁が懸念されています。この問題は、ダム下流側でも同様に発生しており、地域全体での水質改善が求められています。
2019年10月12日、令和元年東日本台風（台風19号）による豪雨の影響で、城山ダムとしては初めて緊急放流が行われました。この放流は、下流地域への影響を最小限に抑えるための措置でしたが、ダム管理の重要性とその役割を再認識させる出来事となりました。
城山ダムの周辺には、弁天橋、桂橋、名手橋、三井大橋、新小倉橋など多くの橋が架かっており、これらの橋が地域の交通網を支えています。特に城山大橋は、ダムの天端を利用した珍しい橋であり、相模原市内外へのアクセスを容易にしています。
城山ダムは、神奈川県内の重要なインフラ施設として、洪水調節や水資源の供給、発電といった多様な機能を持っています。また、周辺の津久井湖は観光地としても知られ、多くの人々に親しまれています。一方で、水質汚濁や災害時の対応など、解決すべき課題も抱えており、今後の管理が重要です。